我が家の猫

我が家の猫は意外にも血統書付きの猫である。

それは我が家らしく8割引の出会いであった。

 

体は成猫と遜色無く、ホームセンターの狭いショーケースで売れ残って窮屈そうにしており、焦点が定かではない澱んだ目をして手枕で寝そべっていた。

 

両隣の仔猫は通行人が通ると好奇心旺盛に目で追ったり、時には駆けて追ったりとはしゃいでいたが、彼はそうではなかった。

 

育ちすぎた体を重そうに横たえ、全てを諦めたかのような顔をして一向に動かないのである。とてもじゃないが営業上手な猫では無かった。

 

余りの世捨て猫な雰囲気に思わずカメラで写真を撮った程だ。(プリントアウトして今も飾ってある)

 

「これじゃあ誰も買ってくれないよなあ…」

 

店員さんに声をかけ猫を膝に乗せてもらう。

大人しくぐんにゃり生温かい。不安そうに「ニャア…」とだけ鳴いた。

店員さんは一生懸命「あ、ゴロゴロいってますよ!懐いてるみたいです!お膝で落ち着いてる!」と言うもゴロゴロは言ってないし、落ち着いてるのではなく不安と緊張で固まっているだけと素人の私にもわかった。

 

帰宅してからも私はどうもその猫が気になって仕方が無かった。はみ出し者同士(と勝手に認定)のシンパシーを感じたのだろうか。

 

翌日旦那と相談してその猫を家に迎えることを決めた。

昨日の店員さんが「きっと○○ちゃんを迎えにきてくださると何故か確信していました」と微笑んだ。

 

昨日の会話もセールストーク臭をあまり感じず、この売れ残りの猫の身を案じている様子を会話の中から所々感じていた。

 

 

 

 

初めこそ怯えて洗濯機の隙間に隠れて震えていた彼であるが、

 

自分の放屁音に驚き「何ヤツ!?」と振り返る、

ベッドを占領しローリングしながら滑落し視界から消える、

トイレ後に猫砂をカキカキせず、トイレから降りた後3歩あるいてからハッと思い出し何も無い床で念入りにエアカキカキする、

 

など今では私に似てなかなかバカな猫になっている。

 

しかし何故1年近く売れ残っていたのか今でもサッパリわからない。

健康かつ器量も声も良い。そのうえ気が優しく大変穏やかで威嚇されたことは1度も無い、どこを触っても怒らない。悪さもしないしパーフェクトな猫ではないか。。

 

ただ、現在6.5kgの巨大なアザラシになっており、目下ダイエット中である…